広報担当の柴田未来です。
前回の山下泰裕氏に続き、本シンポジウムの主催団体である日本ローエイシア友好協会の会長である原田明夫氏に、本シンポジウム開催の意義などについてお話を伺ってきました。

(柴田)
この度、『スポーツビジネスの展開〜北京オリンピックに向けて』と題してシンポジウムを開催することになりましたが、私たち法律家がスポーツイベントを主題に議論をすることは、これまであまりなかったことだと思います。
このようなシンポジウムを開催する意義についてお聞かせ下さい。

(原田明夫氏・以下「原田氏」)
アジア・太平洋諸国・地域の法律家とその団体が集まって組織しているローエイシア(正式名称はThe Law Association for Asia and the Pacific/LAWASIA:本部はオーストラリア)と、日本ローエイシア友好協会の活動をもっと活性化させて、各国の法律家同士の交流を深めるためにはどうしたら良いか、共通の活動テーマとして相応しいものを探していました。
特に、アジアとして協力できるテーマは何かと考えた時に、来年行われる北京オリンピックを中心に何か協力ができないかという話しが出てきました。
日本と中国に横たわる政治的な問題を離れて、スポーツを中心テーマとしたならばみんなで協力できるのではないか。日本として中国のオリンピックを応援するという連帯の気持ちを表したい。また、このようなテーマは日本の法律家の方にも関心をもってもらえるのではないかと思ったのです。

スポーツ法は、日本では、まだメジャーな法律分野とはいえません。
しかし、スポーツ法は、契約問題、パブリシティ権等の商業的な側面の他に、薬物の問題や、代表選考など選手と所属団体の紛争等、幅広い問題を含んでいます。
最近では、スポーツに関する様々な法律問題が注目されるようになってきました。
このような流れの中で、中国法学会も、この時期に北京オリンピックを主題とするシンポジウムの開催に興味を示してくれましたし、韓国の法律家の団体である大韓弁護士協会の協力も得ることが出来ました。

北東アジアで、日本、中国、韓国の法律家が一つのテーマについて連帯するということはとても珍しいことだと思います。

(柴田)
やはり、それが実現できたのは、『スポーツ』というテーマだったからですよね。

(原田氏)
基調講演をして下さる山下泰裕さんも、スポーツを通した国際交流を目指して活動をしておられますが、若い法律家の皆さんにも、そういう機会と捉えてもらっても良いのではないかと思っています。
もちろん、スポーツ法については、ビジネス面も今後注目される分野だと思いますが、スポーツというのは、政治とは離れたところで交流が出来るものでもあります。法律家が、スポーツを共通のテーマとして意見交換をすることによって相互理解が進められる。今回のシンポジウムにはそのような意義もあると思います。

そして、それを日本で開催するということにも意味があると思います。
中国とうまく連携ができて、ローエイシア所属各国の協力も得られました。
若い法律家の皆さん、企業法務に関わっている方々、学生の方々には、スポーツを題材に、法律家がこういう形で国際交流ができるということも知ってもらいたいと思います。

(柴田)
とても大きな意味合いをもつシンポジウムなのですね。
ところで、スポーツに関わる法律問題と言いますと、オリンピックなどの代表選考の問題等、端から見ていて必ずしも公正には見えないこともあります。
もっと法律家が中に入って手続を客観化した方が良いのではないかと思われることもありますよね。みんなが納得してその選手を応援できるようになったらよいと思うのですが。

(原田氏)
そうですね。手続の透明化の問題もありますし、他にもドーピングなど様々な問題が起きています。スポーツに関連する問題について、法律家がもっと関与して、紛争を防止する、あるいは解決するために役に立てたらよいと思いますね。

また、アマチュアスポーツと言っても、競技となれば勝たなければならない。選手が練習に集中できるように、どういう環境が良いのかも考えなければなりません。
また、日本のアマチュアスポーツは企業の実業団に支えられているところも多いが、選手と企業との雇用関係はどうしたら良いのか、企業の経営が悪化して実業団が廃止された場合に選手はどうしたら良いのかという問題もありますね。
選手や、チームがコンディションを維持するためには費用がかかりますから。

国家が威信を賭けて支えているところもあれば、アメリカのようにあくまでもビジネスとしてとらえて選手を支える仕組みが出来ているように見える国もある。
日本でも、努力した人がしっかり報われる、それは金銭的な意味でも契約等で守られるという仕組みが出来ていけばよいと思います。そういう意味でも、法律家として関与する余地は沢山あるのではないかと思います。

(柴田)
スポーツに法律家が関与するというと、アメリカのように商業主義に走りすぎるのではないかと受け取られる向きもありますが。

(原田氏)
確かに、中間に代理人が入った場合にこれまでよりも契約金が高くなるということもあるかも知れません。しかし、スポーツ選手としての活躍の時期は短いですし、再就職のシステムも整っていません。努力して、優れた成績を挙げた選手が適正に報われるということも必要ではないでしょうか。
それがもっと若い人達のやる気を起こさせることにもつながると思います。

課題は沢山あります。このシンポジウムで解決しなければならないということではなくて、議論をするきっかけ、法律家がもっとこの分野に関わるきっかけになればよいと思っています。いわばキックオフ・ミーティングだと考えています。